はじめに
「あれ、いない…」心臓が止まりそうになる瞬間
在宅介護をしていると、避けて通れない悩みのひとつが「徘徊」です。
「気がついたら玄関の鍵が開いていた」
「夜中に姿が見えず、外を探し回った」
こんな経験をした家族介護者も多いのではないでしょうか。
夜中にトイレへ行ったと思ったら、そのまま玄関のカギを開けて外へ…。朝起きたらベッドが空っぽ…。その瞬間、頭が真っ白になり、心臓がバクバクして、足が震えるような感覚に襲われます。
徘徊は本人にとっては理由がある行動ですが、家族にとっては心配の種。「もし迷子になったらどうしよう」という不安は常につきまといます。
でも実は、“日常の準備”をしておくだけで、いざというときの安心感は大きく変わります。この記事では、徘徊に備えるための具体的な工夫と、迷子になったときの対応の流れを、家族目線で紹介します。
なぜ徘徊は起こるの?
「徘徊」という言葉だけ聞くと「ただ歩き回る」というイメージですが、実際には本人なりの理由が隠れています。
- 「昔の職場に行かないと」と思って外に出る
- 「家に帰らなきゃ」と今の自宅を「よそ」と感じる
- 夜中にトイレや水を探して家の外に出てしまう
- 不安や退屈から、歩くことで気持ちを落ち着けようとする
つまり、本人にとっては「必要な行動」。ただし、そのまま外に出てしまうと迷子になったり事故に遭うリスクがあります。家族はそのギャップに悩まされるわけですね。
早朝に防災無線が・・・
たとえば、こんな場面を想像してみてください。
70代の母を在宅介護していたAさん。ある早朝、町内放送で「高齢の女性が行方不明になっています」というアナウンスが流れました。慌てて家を見に行くと…ベッドが空っぽ。パジャマのまま、母はすでに外に出てしまっていたのです。
幸い近所の交番で保護されて無事に帰宅できましたが、Aさんは心底冷や汗をかいたといいます。
このケースでは「名札をつけていた」「近所に事情を話してあった」ことが幸いしました。もし何も準備をしていなかったら…と考えるとゾッとしますよね。
エピソード①:早朝に姿が見えない母
70代の母を介護していたBさんは、ある早朝、町内放送で「高齢の女性が行方不明になっています」というアナウンスを耳にしました。嫌な予感がして寝室をのぞくと…ベッドが空っぽ。母はすでにパジャマのまま外に出てしまっていたのです。
慌てて近所を探すと、幸いにも近くの交番で保護されていました。母は「ちょっと散歩してただけ」と笑っていたそうですが、Bさんの心臓はバクバク。以後、母の靴には名前と連絡先を書いたタグをつけるようにしたそうです。
エピソード②:買い物に行こうとして迷子になった父
Cさんの父は認知症が進み、よく「財布を持ってスーパーへ行こうとする」習慣がありました。家族が止めても「ちょっとだから」と聞かず、ある日とうとうひとりで出て行ってしまったのです。
数時間後、駅前で座り込んでいる父を保護してくれたのは、地域の交番の警察官でした。Cさんは「スーパーに行きたい」という父の気持ちを理解し、週に数回は一緒に短時間だけスーパーに行く時間を作るようにしました。すると、父の徘徊の回数も少し減ったといいます。
エピソード③:ご近所の協力で無事に帰宅
Dさん宅では、90代の祖母がよく庭先からフラッと外に出てしまうことがありました。ある夕方、祖母の姿が見えず、家族全員で必死に探していると、近所の八百屋さんから「今うちの店の前にいらっしゃるよ」と電話が。
実はDさんは普段から「もし祖母を見かけたら声をかけてください」とご近所にお願いしていたのです。この地域ぐるみの協力があったからこそ、大事に至らずに済みました。
できることから少しずつ備えよう
名前と連絡先を「身につけておく」
なんといっても基本は「見つかったときにすぐ連絡してもらえること」。
おすすめは以下の工夫です。
- 衣類や靴に名前と電話番号を縫い付ける
- 名札やバンドを手首につける
- 財布にカード型の連絡先を入れておく
「子ども扱いみたいで気が引ける」と感じる家族もいますが、これは命を守るための安心アイテム。もしものときの“保険”と思えば、少し気持ちもラクになります。
GPSやセンサーを取り入れる
最近は小型GPSや見守りセンサーが手軽に使えるようになっています。
- キーホルダー型のGPSを持たせる
- 靴に入れられるタイプのGPSを利用する
- 玄関にセンサーをつけ、ドアが開いたら音で知らせる
最初は「そんな大げさな…」と思うかもしれません。でも実際に使ってみると「安心して眠れる」「外出中も落ち着いて過ごせる」と家族の負担がぐっと減ります。
ご近所・地域に「ひと声かけておく」
いくら家族があらゆる手を尽くしたとしても徘徊対策は家庭の中だけでは完結しません。外に出てしまったときに協力してくれる人を増やすのがポイントです。
- ご近所に事情を話しておく
- 民生委員やケアマネージャーに情報を共有しておく
- よく立ち寄る商店やコンビニに顔を出し、事情を伝えておく
地域ぐるみの「見守りネットワーク」があると、発見のスピードは格段に上がります。
もし行方不明になったら?行動のステップ
万が一、姿が見えなくなったときのために、以下の流れを頭に入れておくと安心です。
- 家の中と庭を確認する(意外と近くにいることも多い)
- 近所を10分ほど探す(よく行きたがる場所を優先)
- ためらわず警察に110番通報する
- 地域の人やケアマネに連絡して協力を依頼する
特に警察への通報は「大げさかな」と迷う方が多いですが、徘徊は一刻を争います。遠慮せずすぐに連絡しましょう。
チェックリスト:徘徊に備えるための日常の確認
- 名札や連絡先カードを持たせているか
- GPSやセンサーを活用できているか
- ご近所やケアマネに事情を伝えてあるか
- よく行きそうな場所を把握しているか
- もしものときの連絡手順を家族で共有しているか
完璧を目指さなくていい
行方不明や徘徊に限らず、あらゆる対策は「すべてを完璧にやらなければ」と思うと、家族が疲れ果ててしまいます。
大切なのは「できることから始める」こと。たとえば、まずは名札だけ、GPSだけでも十分です。積み重ねることで安心感が増していきます。
まとめ:備えが心の支えになる
家族の徘徊は在宅介護をしている人にとって大きな不安の種ですが、備えがあると「最悪の事態になっても、こうすればいい」と思えるようになります。
介護は長い道のり。無理なく続けるためにも、できることを少しずつ積み重ねていきましょう。



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