介護と仕事の板挟み
「もう続けられないかもしれない」
介護と仕事の両立に悩む人が、心のどこかで一度はつぶやいたことがあるのではないでしょうか。
日本では、毎年およそ10万人が介護離職しているといわれています。親の介護が始まったことで、やむを得ず仕事を辞める――。これは決して特別なケースではなく、誰にでも起こり得る現実です。
けれども、仕事を辞める前にできることはあります。介護サービスや制度を上手に使い、働き方を工夫し、家族や地域に助けを求めることで、「介護離職をしない選択」が可能になる場合も少なくありません。
この記事では、介護離職が起きやすい理由と、それを避けるための実践的な方法を、できるだけ分かりやすくまとめました。
なぜ介護離職が起きるのか?
1. 介護の時間が読めない
介護は「9時から17時まで」では区切れません。デイサービスのお迎えが遅れる、夜中にトイレに起こされる、病院から突然の呼び出しが入る……。予測不可能な予定が、働き続けるうえで大きな壁になります。
2. 体力と気力の限界
「仕事をして、帰宅後は介護をして、また翌日出勤」――。これを続けると、心身の疲れが積み重なり、ついには限界に達します。睡眠不足やストレスによって、健康を損ねる人も少なくありません。
3. 職場の理解不足
「また介護で早退?」「誰か代わりはいないの?」
職場に十分な理解がないと、肩身が狭くなり、最終的には「辞めるしかない」と追い込まれてしまいます。
4. 制度やサービスを知らない
実は、介護休業制度や短時間勤務制度、介護サービスにはさまざまな選択肢があります。けれども、それを知らずに一人で抱え込んでしまい、離職へとつながるケースも多いのです。
辞める前にできること:制度とサービスを知る
介護休業制度を活用する
法律で定められている「介護休業制度」を知っていますか?
対象家族1人につき、通算93日まで休業できる制度です。しかも、条件を満たせば「介護休業給付金」が雇用保険から支給されます。
時間単位の介護休暇
「1日休むのは難しいけど、午前中だけ通院に付き添いたい」
そんなときに便利なのが時間単位の介護休暇です。短い時間で取得できるため、柔軟に対応できます。
職場の働き方調整
- 時短勤務
- フレックスタイム
- 在宅勤務
最近は制度として整備している企業も増えています。「制度があるかどうか分からない」という場合は、人事部や上司に相談してみましょう。
介護サービスの活用
介護保険制度を使えば、デイサービス、ショートステイ、訪問介護などを組み合わせることができます。
「親が嫌がるから」と最初から諦めてしまうのではなく、ケアマネジャーと一緒に調整しながら、本人も安心できる形を探すことが大切です。
実際の工夫例
ケース1:介護タクシーを利用
Aさん(50代・会社員)の場合
母の通院付き添いが月2回あって、午前中はどうしても仕事を休まざるを得なかったんです。でも、介護タクシーを利用してみたら、私は午後からだけ付き添えばよくなり、半休で対応できるようになりました。
ケース2:職場への打ち明け
Bさん(40代・営業職)の場合
最初は「迷惑をかけたくない」と隠していたんです。でも、思い切って上司に話したら、同じ部署に介護経験者がいて、すぐに在宅勤務を一部導入できました。意外と理解してもらえるものなんだと感じました。
ケース3:家族で役割分担
Cさん(30代・共働き)の場合
きょうだいで「誰が何曜日に親を見に行くか」をカレンダーアプリで共有するようにしました。一人で全部抱えずに済むだけで、気持ちがすごく楽になりました。
介護離職を避ける「心の持ち方」
- 「完璧にやらなければ」と思わない
- サービスを使うことは親不孝ではない
- 仕事を続けることが、結果的に家族のためにもなる
介護はマラソンのようなものです。全力疾走を続けてしまうと途中で倒れてしまいます。だからこそ、力を抜きながら、制度や人を頼りながら続けていくことが大切です。
まとめ
介護離職は誰にでも起こり得る現実ですが、
- 制度を知る
- 職場と相談する
- 介護サービスを活用する
- 家族や地域とつながる
これらを組み合わせれば、「仕事を辞めずに介護を続ける道」も見えてきます。
一人で抱え込むのではなく、助けてもらいながら「両立」を目指しましょう。



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