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【シリーズ】貧困層の介護3-路上生活者と生活保護-

介護現場のリアル

この日本国において、誰しもが必要なときに、どんな人であっても介護が受けられるのは当然の権利とされています。一定の年齢を超えているか特定の疾病があり生活に支障がある場合には介護保険、それ以外は障がい者支援などの社会保障を受けられる仕組みがあります。

さて、これらの社会保障は受ける権利が誰しもにありますが、「受けない」選択をするのも自由です。富裕層の中にはこの公的サービスを使わずに専属の看護師やお手伝いさんを雇ったり、高級老人ホームと呼ばれる中でもさらに飛びぬけたレベルの一流ホテルも真っ青なゴージャス施設に入居することもあります。
有体に言えば、「金さえあればなんでもあり」なのです。大なり小なり欲のある人間は札束で頬を叩かれれば喜んで尻尾を振ってしまうのです。私だって大金持ちの要介護者に札束を鼻先にぶら下げられたら、謹んですべてのスキルを捧げる自信があります。

では反対に、介護を受けたくても受けられない人、すなわち

「金のない人間」である貧困層と呼ばれる人たちはどうするのでしょう?

介護という社会保障は受ける権利が必ずありますが、受けなくてもいい権利も同時に有します。あくまで権利であって義務ではないのです。
要は詭弁に近いのですが、困っていたとしても適切な支援の手が入るとは限らない、という矛盾を秘めています。

この「貧困層の介護」について実際に現場で見聞きしたことや体験したことをお伝えしていくわけですが、かなりボリュームが出てしまったため数パートに分けてシリーズとして公開しています。

今回はシリーズ3本目、路上生活者と生活保護のお話です。

\前回のお話はこちらから/

\シリーズ1本目はこちらから/

路上生活者が介護を受けるためには

こちら↓でもお話した通り、住所がない限り介護を受けることができません。

では、まず何をすればいいのかというと、居住地を得ることすなわち「家に住むこと」です。

元の家に帰ることができれば一番良く、またはいくらかのまとまったお金があれば保証人がいなくともアパートなどを借りることが可能です。ですので、介護サービスを受けたくなった時にどこかへ住めれば問題は即座に解決します。

ところが路上生活をしている人にとってこのように対処することは簡単ではありません。大半が

お金がない

元の家がない

頼れる親類縁者がいない

ことがほとんどです。この世はお金さえあれば問題を解決できることも多いですが、そのお金がない人にとっては八方ふさがりとなってしまいます。

じゃあ生活保護を受給したら?

家もお金がなく介護を必要とするレベルで体調が悪いのですから、最低限の文化的な生活を保障する「生活保護」を利用すべきだろうと考える方がほとんどでしょう。

では、困ったら役所に行って「生活保護を受けさせて」と言いに行ったとして、もちろん、困窮状態を伝えて無事に支援を受けられるようになることもありますが、そうでない場合ここでも問題が発生します。

生活保護を受給するためには介護保険と同様に居住地で申請しなければなりません。

え、家がないのに?

家がないから助けてと言いに行ったら「家がないからダメ」と申請書すら受け取ってくれない事例もあるそうです。

無茶苦茶すぎる。

他にも「ここではなく(数十年前に住民登録していた市町村)で申請してください」と門前払いを受けたり、やっとの思いで空き缶拾いをしてわずかに収入を得ていると申告すると「働けるからダメ」と却下されるという話もあります。

いくら介護が必要なくらいに具合が悪かったとしても、それがその人自身や友人が見てそうだと素人判断したレベルでは役所は取り合ってくれません。確かに不正受給の水際対策として仕方のないことでもあるため一概に行政だけの責任とも言えない難しい問題です。

生活保護を受給するルート

ならば結局家がないと生活保護を受給することもできないし、家に住むこともできないし、介護を受けることもできないのか?と思われるかもしれませんが、現実はいくつかのルートで生活保護+介護などの支援を受けることが可能です。

まず一つ目は正攻法での申請です。

正直に窮状を訴えて申請書を提出し、正しく受理・審議され、速やかに適切な支援を受けること。これが叶えば一番理想的です。しかし前述の通り受理されないことも多々あることが難点です。

次に、支援団体のバックアップを受けること

ホームレスの自立支援を行う支援団体が多数あり、彼らはいわば「生活保護を受けさせるプロフェッショナル」です。生活保護に限らず行政への申請は煩雑で融通も利かないため困った経験のある方もおられるでしょう。

この支援団体は何度も生活保護の申請を通していますので書類作成はお手の物ですし、場合によっては人権をはじめとする法律を盾にして交渉を進めることが可能です。

または、民間のホームレス支援施設に入ること

前項の支援団体が運営していることもあり、この施設に入ればまず住所を得ることができます。したがって「住所がないから門前払い」をいう事態を最低限避けることができます。

ただし、悪質な支援施設も多数あり、寮費や食事代などと言って不当に料金を徴収されることもあるので十分に検討する必要があります。

最後に、入院することです。

これはまさに最後の手段で、本当に大けがをしたりなんらかの病気で体調が悪くなければ使うことができませんが、高齢ホームレスの実態としてよくあるルートです

病院にはソーシャルワーカーと呼ばれる患者の生活・社会課題解決のための支援員がおり、退院後の生活を福祉機関等と連携して繋げてくれます。また、病院としても無保険ホームレスから入院費を徴収できるとは思っていないため福祉事務所へ生活保護適用申請を行います。

このため、医療福祉連携の核たる救急病院へ入院することになれば自動的に支援に繋がっていくことになるのです。

ただし住める家がまともとは言っていない

無事に生活保護を受給することができれば住居支援があるので住む場所を得ることができます。

とはいえ、まともなアパートやマンションなどの部屋を借りて与えてくれるのかと言うと答えは限りなく×に近い△です

もちろんまともな部屋を借りることも可能ではあるのですが、すべての貸主が生活保護受給者を受け入れてくれるわけではありません。近隣住民とのトラブルの元になったり、従前の癖でゴミを拾い集めため込んでしまい悪臭の元になる、高齢であるほど孤独死のリスクが高い、などのマイナス面があるため資産価値や入居率の低下を考慮して断られることがよくあります。

公営団地であれば断られることもありませんが、空きがなければ入居することはできませんし、運よく空きがあったとしても抽選に外れてしまうこともあります。

また、不動産会社の軒先には時折「福祉歓迎」「福祉入居可」などの記載がありますが、これは生活保護受給者でも入居できる物件があるサインです。なぜリスクがあるのに歓迎しているのかというと、要は借り手がつかないような部屋だからです。小綺麗な部屋もなくはないのですが実際は、

日当たりが悪い(どころか無)

事故物件

周辺に反社事務所多数

築年数がとてつもなく古い

風呂トイレ共用

といったようなお世辞にもいい物件とは言い難い部屋がほとんどです。これだけでもなかなか住みたくないような物件ですが、それでもまだマシなのかも知れないケースがあり、やっと住む場所を手に入れた!と思ってあてがわれた部屋が

簡易宿泊所の一室

ということもあります。

前述のとおりどこでも住めるというわけではないため、特に人口過密地では借りられる部屋に対して生活保護受給者の数が多すぎる問題があります。仮に借りられたとしても住宅扶助の金額を上回ってしまう部屋もあるため選択肢はより一層狭まります。

そうは言っても現に住む所がなくて困っている訳なのですから行政としても苦肉の策で簡易宿泊所での居住と生活保護受給を認めざるを得ないのです。

これは”日本”で起きている本当の話

一応先進国と呼ばれる日本にあって、ここまで極端な貧困はないだろうと思われる方もいるでしょう。しかし残念ながら極端な貧困者、介護を受けることができない貧困者は確実に存在しています

そこから人間らしい暮らしに戻れた人自ら戻らないことを選択した人戻れなかった人、さまざまなケースに出会いました。ハッピーエンドもバッドエンドもどちらも経験してしまいました。

崩壊しかかっている今の世界に一石を投じる、とまでの壮大なことは言いませんが、いつか自分や周りの人がそうならないとも限りません。解決手段の話をし始めると政治の話になってしまうため、基本的には触れずにあくまで実態と少しの持論で収めていこうと思います。

ただ「日本のどこかにこういう環境、人間がいるのだ」と記憶に残ればと思いこのあとも書き進めていくため引き続きお読みいただけるとうれしいです。

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